介護保険の問題点(私見)
高齢者の増加で、老人の医療費が今後更に増加することは明らかであること、医療保険制度がインフラ化しているために、健康診査などの健康管理や健康相談、第3者行為による傷害治療(損保会社などは交通事故などの治療費を任意保険から支払わず、医療保険で済ませようとする)も医療保険に求める国民感情、保護者や家族としての責任転換のために医療機関を訪れる姿勢などにより、現在30兆円といわれている医療費総量は加速度的に増大することが明白である。本来ならば、この医療費へ国庫負担が比例するように増大するべきなのに、ゼネコンや銀行への支援、海外投資などの増加分を、医療費などへの国庫負担を削減してその分を医療保険から拠出金という形で賄おうとしたため医療保険財政を危機的状況にしたことを隠している。そして、老人保健制度を含めた医療保険全体の改革を保険制度の改革と称して、国庫負担の削減分を国民の負担額増大で賄おうとする方法を模索。健康保険料を単に上げるだけでは国民は納得しないし、確実な保険料の徴収もままならない。国民保険や社会保険などの支払い側も金を出したくない。良き時代に作った保険・厚生施設の維持をしなければならない。官僚たちの天下り先を確保しなければならない。また、今後も国庫負担を押さえるために、老人の1割負担をしい、更には大病院での5割負担、薬剤の全額患者負担、医療費の保険料上限枠の設定などを考えて、それが最高の医療改革だと思っている。
このような背景のもとで、考えられた制度が介護保険である。高齢者の増加に対応するべく、地域がそれを支える制度として出来た制度などと言っているのは、まやかしとしか言いようがない。医療費に対する国庫負担を元に戻し、医療保険財政の建て直しをはかるのが本筋なのだが、国民負担の増加で解決しようとすることの第1歩なのである。
マスコミの反応もおかしい。前記したことは良く分かっているはずなのに、国庫負担額についてはあまり論評しないで、医療費総量の増大は医療機関に問題があるように報道したり、医師会が、国民の医療費負担の増加を求める保険制度改革に対して反対すると、それは自分たちの利益を守るためのエゴだと報道している。更にそれを追い打ちをかけるように報道される医療事故問題。医療事故はあってはならないし、あまりにもお粗末なミスによって尊い生命が危機においやられることは遺憾である。それを戒めるための報道であるならば結構であり当然であろう。しかし、違う目的に情報コントロールされていないだろうか。例えば医療機関には金を払いすぎているというイメージを国民に与え、医療機関の諸経費の増大、職員の賃金アップの理由による診療費の増加要求を悪いことのように情報操作を行っていないだろうか。医療事故報道も官僚関係機関で無い医療機関が報道の対象にさせられているような気がするのは私だけか。
次に、矛盾点を考えてみる。介護保険の目的には、「現行の高齢者介護に関する制度は、福祉サービスと保健医療サービスが別々に提供されており、本人や家族がサービスを自由に選択できない、介護サービスを総合的に受けられないなどの問題がある。このため、介護保険制度は現行の老人福祉制度と老人保健制度の介護に関する制度をひとつにまとめ、介護が必要になっても住み慣れた自宅で高齢者が自立した日常生活を送ることができるよう、総合的な介護サービスを提供しようとするものである。」となっている。しかし、「介護保険制度は現行の老人福祉制度と老人保健制度の介護に関する制度をひとつにまとめる」という言葉の裏に、厚生省は介護保険制度は「介護を医療保険から切り離すとともに、医療については、治療という目的にふさわしい制度として、医療提供体制を含む総合的かつ抜本的な医療制度改革を実施する前提となる」と明言している。つまり、対象者が医療保険、介護保険のどちらかに決められるならば可能かもしれないが、介護保険の対象となる方は、ほとんど生活援助と医学的治療を同時に必要とすることが多いのに、医療から介護を分離することで医療費を抑制することしか考えていない。
「総合的なサービス」と謳っているが、要介護度によるケアプランの作成は、細切れなサービスをくっつけあって行われ、本人負担分という金銭的なしばりをも発生させ、サービスの低下をみるのは明白であろう。さらに、医療機関への受診や医療的な立場で療養を指示することも、それは介護の問題ですからといって制限されるようになったりすれば、医療と福祉は分離状態となってしまう可能性もある。医療保険証と介護保険証が統一されなかったことが不安をあおる。
「住み慣れた自宅で高齢者が自立した日常生活を送ることができるよう」とあるが、このことにも裏が見え隠れする。私は、自宅で最後を迎えたり自宅で療養することには賛同するが、この在宅医療が成立するには在宅ケアシステムと施設ケアシステムの両輪があってこそ成り立つものである。しかし、施設ケアシステムの運営費が増大することを恐れたり、そもそも施設の整備を抑制するために在宅重視という方針を打ち出しただけのことである。「ゴールドプラン2000」で施設の充実と言っているが、施設ケアが必要な高齢者数から考えても、あまりにも貧弱な数字ではないだろうか。もっと重要なことは、いままで介護重度だった方が最後を迎えるのが特老施設であることが多かったが、この方々が在宅重視という名の下に家庭へもどされるようになることである。逆に介護度は軽度だが家族がいなかったり、問題行動などで施設に入所していた方も、施設側の運営面から介護報酬が高い要介護度の重い人だけを入所させるようになることが予想され、退所を勧告される可能性が高い。したがって、「利用者が施設を選べるようになる」といううたい文句は、はっきり言って嘘である。
その他にも、九州大学の伊藤周平助教授によると、介護保険の導入が医療保険制度へ及ぼす影響として、次のようなことを危惧されている。
1.要介護認定基準のようなものが診療報酬の定額支払方式へ導入されるかもしれない。
2.高齢者の年金から保険料を天引きすることで、医療保険も天引きされるかもしれない.
3.介護保険では保険給付と自己負担の併用が承認されていることから、医療保険でも定額性となり、保険給付で足りない部分は全額自己負担となるかもしれない.
4.アメリカの圧力で病院経営への営利企業の参入解禁がはじまり、医療法人の営利化が進む。
現在、毎日のように厚生省の言うことが変わるこの制度、順調に介護保険制度が進行したとしても、利用総額は増大することは必至であり、そうなれば保険料負担の増加か、サービスの上限枠の制限をきびしくするしかなくなり、制度の根幹からひっくり返るかもしれない制度なのだから、しっかり行く方向を国民が見守っていかねばならない。